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東明雅の連句Q&A
 

 
16・花の季
花の季についてお尋ねします。季寄せでは花は晩春となっております。入学という言葉は仲春になっており、花の後には使えないことになります。花の季と実際とのギャップはどう考えればよいのでしょうか。
 

 
花という語は、普通の季寄せでは晩春の季語となっておりますが、それも使いようによるもので、たとえば「花を待つ」とか、「初花」というように使えば仲春の句になります。このような場合には、入学とか、新社員、あるいは燕などを付句に使っても、決して季戻りとは言えません。

もともと、季戻りとは、前句の季と付句の季が一見して違和感を感ずるような場合を言い、たとえば花の句に、早春・余寒・春一番などを付けるのは、困リますが、前にあげた入学・新社員・燕などの類は、いずれも四月上句、桜の満開のころと時期的に一致し、決して違和感を覚えません。

私はこのようなものは、花の後、挙句に出してもよいと考えます。

人によっては、「花といふは桜の事ながら、すべて春の花を言ふ」という「三冊子」の言を根拠に、花は三春の季語である。だから、その後には何をつけてもよいという人も居ります。

たとえば、

   倫教の公園雨の花に逢ひ

などの花は、明らかに桜花ではなく、春咲く花の何かを表現したものでしょう。しかし、この句の後にも早春・余寒・春一番などはおそらく付かないでしょう。「三冊子」が何に拠って、このような説を唱えたか私は知りませんので、花は三春であるから、その後には何を付けてもよいという考えには、私は賛成しかねます。

要するに、花の句が出たら、その句を仔細に吟味して、それが晩春の句であると判明したら、季戻りのないように、晩春、または三春の句をそれに付けるべきでしょう。ただ、季寄せの分類ももちろん絶対ではありませんので、仲春の季語でも、入学とか新社貝・燕とか、四月上句の季語は、違和感のない限りは付けてよろしいと存じます。

違和感があるかどうかの判断は、捌きの重要な役目であり、その判断が連衆の賛同を得られれば、その捌き手は上手と言われ、賛同を得られなければ、その反対の評価を受けます。このようなところが、連句の勉強の一番大切なところで、よく従来の作品例も考慮し、研究して、刊断すべきでしょう。
 

●「猫蓑通信」第16号 平成6(1994)年7月15日刊 より

 
 
 
 
 
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