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東明雅の連句Q&A
 

 
1・花の句の出し方
連句では「花」の出る場所が決っていますが、「花」が発句に出てしまった場合、「花」の座に来た時どのようにすればよいのでしょうか。又、「紫陽花」や「無果花」のように、花という文字が一部に使われている場合の「花」の句の出し方についてもお教え下さい。
 

 
「花」は歌仙では二箇所、二十韻では一箇所ですが、その出る場所も決っており、これを「花の定座」といいます。

歌仙の場合、「花」が発句もしくは引き上げられて定座の前に出たら、初折の「花」の定座にはもう「花」は出せません。名残の「花」(匂いの花)には、「花」を出すことになります。(註)

次に二十韻の場合ですが、この場合は「花」は一箇所しかありません。そして、この「花」が発句に、または引き上げられて出た場合、もともと「花の定座」と挙句とは、大体春の季語になる公算が大きいのですが、この場合は「花」にかわる、たとえば「桜」とか「柳」とか、あるいは「桃の花」・「松の花」など、そこが本来なら「花の定座」であることを他人に意識させるだけの貫禄のある季語を用いて付けるのがよいとされております。

たとえば「竹剪りし短冊受けや花の冷え」を発句とする二十韻では、「花の定座」には、「咲きみちて濃きも淡きも紅枝垂」という句が付いております。これなど、「紅枝垂」は桜の一種でありますが、既に発句に「花の句」が出ているため、ここでは「花」という語を避けたものであります。

「紅枝垂」という桜でさえも「花の句」(正花とも言います)として認められないのですから、その他の草や木の花も正花として認められないのは当然でしょう。梅も桃も牡丹も菊も、その他四季折々に咲く花は、すべて美しく愛すべきものですが、それを梅(梅の花)、桃(桃の花)などと詠んだ場合には、それは梅・桃などそれぞれの花の特性を述べる意が主となります。

「花の句」は一巻の飾りであり、特に華やかで麗しいものを珍重・賞翫する意をこめるべきものとされておりますから、右のように梅・桃・牡丹・菊その他、それぞれの花の特性を述べただけでは、華やかで麗しいものを特に珍重・賞翫する意が籠められていないとして、「正花」には用いられません。

おたずねの「紫陽花」や「無果花」なども、「梅の花」・「桃の花」・「菊の花」というものと同様に考え、取り扱うべきで、「花の定座」以前に、このような語が用いられたら、定座には「正花」を出すべきであります。「連句入門」四十八頁を御参考下さい。
 

(註)現代われわれの連句は多く歌仙・二十韻の季題配置表によって作られています。だから歌仙で初折の花が引き上げられた場合は「花の定座」は春の季になることが多いので、この場合は二十韻の場合と同様に処理すべきでしょうが、芭蕉時代の作品は、この場合、他季となったり雑となったりすることもありました。「麦をわすれ花におぼれぬ鴈ならし」(曠野)の発句に対して、初折の「花の定座」には「明るやら西も東も鐘の声」という句が付けられており、「兼好も筵織りけり花ざかり」(炭俵)という発句に対しては、「漸と雨降りやみて秋の風」という秋の句が付いていますので参考にして下さい。
 

●「猫蓑通信」創刊号 平成2(1990)年10月15日刊 より

 
 
 
 
 
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